August 12, 2006

サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL2

今回はテストレコーディングの前段階になる、下見についての投稿です。

放送・映画・舞台等、音声&音楽スタジオ以外の分野では、
常に映像が伴う分野ともいえますね。
特に、下見時に注意したいのが方向性です。
ここでいう方向性は、実際のカメラアングルや、舞台上での配置をさします。

舞台というのは、通常ステージ側と客席側が有り、
お客さんはステージに向かって正面を向いて座ります。
まれに演出で、ステージ外も使いますが、ほぼプロセニアムという、
額縁の用な物で、ステージには枠がついてます。

これは、今までの2チャンネルSTEREOの世界に、
似ていると思いませんか?
お客さんは、ごく簡単な決まりとして、
ステージ(スピーカーの方)の方を向き、プログラムを楽しむ。
ステージから溢れ出る音や、映像はもちろん平面的ではなく、
その劇場やスピーカーから放たれた瞬間に、
どんなメディアでも立体にはなるのですが、
『ステージからそのエナジーがでるとき、
 スピーカーから音がでるときには、
 その性質上方向性は決まった方向にしかでない』

反面、放送や映画等の映像メディアはどうでしょうか?
カメラという性質上、また、映画の発明有志以来、
カメラアングルやモンタージュ理論が多用され、
対象物をとらえる方向性に関して、最初から柔軟な考え方で
作品が制作されていましたね。

これは、もし音で実践しようとなると、こういう事です。
1曲目は正面を、2曲目は楽団が背後に回ります。
3曲目は空中でドラムが宙づりに、4曲目は地面からベースが顔を出して・・・
みたいな事ですよね。

より効果的に伝えるために、映像というメディアは、
方向性を良く考えて作られており、
我々音声技術者よりも、遥かに立体的に音や対象物を、
とらえる訓練と技術が備わっている気がします。

もちろん、音声の世界で、モノラル、ステレオでも、
その奥行き、左右の定位・パンニングは、
音声の先輩達のたゆまない努力で、沢山のノウハウが
引き継がれているとは思うのですが、
いかんせん、映像のように、
『ハイでは次のカットはどんでんです』
という事はなかなか無いですよね、
『どんでんとは』いままで、収録していた方向性の、
全く反対側にカメラが入るという事です。
むろん、照明、撮影、音声全部のスタッフが、お祭り騒ぎになります。
とくに、照明は、太陽光や光源の問題、音声ならば、背景音の方向性が
そして、撮影は、全てのうつり込みが問題になります。
もんだいになるならば、一部のお茶の間ドラマや、
ドリ○のステージコントのように、全て同じ方向から撮影すれば、
良いのではないかと思うでしょうが、
やはり、平面的な対象物(反対側にカメラがまわれない)を、
いくら技術を駆使しても、魅力的には捉える事ができないと思います。

人の目や耳、手で触る感覚というのは、常に立体的であるということです。
反面頭の中で考えた物事というのは、ほとんどが平面に感じませんか?
ですから、もともと、人間が立体的にモノを捉える機能が有るとするならば、
モノラルやステレオという制限された規格が、ここへきて、サラウンドになり、
やっと本来の人間の感覚に近い規格に、
バージョンアップしたと考えてよいのでは、無いでしょうか?

下見からだいぶ遠ざかりましたが、本題です。
ドラマのブームオペレーターをしてた時です。
『台詞は必ず、マイクロフォンを正面まで持って来てとらなければいけないが、
足音等のSEは、カメラのアングルを想像し、達成する事ができれば、
どこから録音しても、どこにマイクをおいても良い』
というように習いました。
また、その足音は、最終的に効果マンやフォーリーアーチストが、
足音をつけ直すためのガイドである場合もあるが、
それにしても常に方向性を考える必要が有る訳です。

カメラは、レンズに写らないもの、
レンズの画角からよければ、不必要な物は映りません。
照明は、バンドアで光を遮れば、不必要な光はもれません。
しかし、音は、回折効果のため、非常に方向性をコントロールするのは、
難しいです。

下見の時に何を想像するか?
音を想像するのです。

下見については、いろいろ書きたい事が有るので、
次回へ続きます。

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